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道徳教育は「いじめ」をなくせるのか

12面記事

書評

教師が明日からできること
藤川 大祐 著
道徳の「少数者排除」を指摘

 副題に「教師が明日からできること」とあり、帯に「子どもたちを、もうこれ以上苦しませないために」とある。
 本書は、幾つかの自治体で「いじめ対策の委員・委員長」を務めてきた著者が、その体験や、研究者として道徳教育にも関わってきた実感を通して、いじめ問題対策と道徳教育の改善について具体的な提言を行うと書かれている。
 その内容は、第1章「いじめ問題の今」、第2章「いじめと道徳教育」、第3章「少数者を排除してきた道徳教育」、第4章「『考え、議論する道徳』をどう実践するのか」、第5章「いじめを防げる学校とは」、第6章「教師が明日からできること」―と結ばれている。
 その各章の中身はいずれも、随所に問題提起があり、提案がある。その中に具体例が豊富に出てきて読み応えがある。じっくり時間をかけて読み進めるべきもので、便利で手っ取り早いがよしとすることに慣れている人には、苦手だと思うかもしれないが、これを読んで実践して、己のものにしていく「学びの本道」である。
 そうした読みが「教師がまさに今できること」「教師が今なすべきこと」と痛感したものである。本腰を入れるという言い方があるが、本気になる、真剣になって取り組むという意味である。本書はまさに本腰を据えて読むべき書といってよいだろう。
(1404円 NHK出版)
(関根 正明・元山形大学講師)

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