思考力・判断力・表現力を中心に評価
10面記事大学入試改革 (1)
平成29年度初頭予定としていた「大学入学希望者学力評価テスト」(仮称)の概要を5月15日、文科省は公表した。大学入試センター試験に代わる新テストの名称を「大学入学共通テスト」(仮称)として、その実施方針を示した。懸案となっていた記述式問題の採点方法については「民間事業者を有効に活用する」とともに、成績の提供時期を「1週間程度遅らせる方向で検討」する。これにより、実施時期は1月中旬の2日間、マークシート方式と記述式問題は「同一日程」で実施する案を示した。今後、関係者と協議し、「実施方針」として確定、公表する。
「共通テスト」に名称変更案
マーク式・記述式は同一日程
平成32年度実施 36年度に本格化
これまで現行の大学入試センター試験に代え「大学入学希望者学力評価テスト」(仮称)を創設するとしてきたが、今回の案では「大学入学共通テスト」(仮称、以下『共通テスト』)と名称変更する方向を提示した。
その理由について、「実施方針策定に当たっての考え方」(案)で、(1)大学入学希望者に求められる共通の学力として、高校教育を通じて育まれる学力のうち「知識・技能」を十分有しているかの評価も行いつつ、思考力・判断力・表現力などを中心に評価するものであること(2)大学入学希望者の高校における学習成果を把握し、大学教育へと接続させていくために、利用大学が共同して実施する共通テストであること―とした上で、「簡素で覚えやすい」名称、「入学希望者の共通の学力評価」「利用大学が共同実施する共通テスト」の性格を「端的に表象する」ものとして共通テストとし、この方向で検討する。
新テストの実施時期は、中央教育審議会答申「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について」(平成26年12月)、高大接続システム改革会議「最終報告」(28年3月)での提案と同様、32年度に「平成33年度入学者選抜」として実施する。共通テスト初年度の対象となるのは、現在の中学3年生。現行の高校学習指導要領の下で、実施することになる。
高校での次期学習指導要領の実施は34年度入学の1年生から学年進行で移行する。3学年全てで新学習指導要領に切り替わるのは、36年度。そのため、新学習指導要領に基づく、36年度以降の共通テストの実施方針は「33年度を目途に策定・公表予定」とした。
共通テストの目的は、これまで大学入試センター試験が担ってきた「高校における基礎的な学習の達成の程度」の判定を前提に「大学教育を受けるために必要な能力について把握することを明確にする」。
実施方針案では「各教科・科目の特質に応じ、知識・技能を十分有しているかの評価も行いつつ、思考力・判断力・表現力を中心に評価を行うものとする」と明記した。
共通テストの実施主体は、大学入試センターが引き継ぐ考え方を示した。「共通テストは利用する大学が共同して実施する性格のものであることを前提に、大学入試センターが問題の作成、採点その他一括して処理することが適当な業務を行う」と提案した。
「実施方針策定に当たっての考え方」(案)には、大学入試センター試験の実施に当たって各大学が担ってきた業務を共通テストでも担う。さらに「思考力・判断力・表現力等を重視して評価する作問体制への転換等が必要」とした上で、高校関係者、高校教育をよく知る大学教員などを「積極的に作問委員として委嘱」など「これまでのセンターの作問方針・作問体制の抜本的な見直しを図り機能を強化する」方向を示した。
高大接続改革(大学入学者選抜改革)
出題教科・科目
記述式
地理歴史・公民・理科に拡大検討
センター試験の教科・科目簡素化は36年度以降
実施方針案では、平成32年度に実施する共通テストの出題教科・科目などを提示した。
これは現行学習指導要領の下で行われるため、記述式問題を出題することになる「国語」と「数学I」「数学I・数学A」以外は、大きな変化はない。
当面、共通テストでの「国語」と「数学I」「数学I・数学A」に記述式問題を導入するのは、現行学習指導要領で「国語総合」「数学I」が共通必履修科目として設定されているためだ。
出題科目数が膨張したといわれる大学入試センター試験の教科・科目の簡素化を含めた見直しは、大幅な教科・科目の見直しを想定する次期学習指導要領を踏まえ「平成36年度以降」というスケジュールを示している。
また、「マークシート式問題」に加え「記述式問題」の導入の拡大については、36年度以降に実施する共通テストでの「地理歴史・公民分野や理科分野等」での検討を進めるとしている。
「実施方針策定に当たっての考え方」(案)は「記述式問題を導入し、全教科を通じてより主体的、論理的な思考力・判断力・表現力等を一層高めることが重要」としながらも、現行学習指導要領では地歴公民、理科で共通必履修科目が設定されていないため、国語・数学での導入状況を検証しながら、地理歴史・公民分野や理科分野等への拡大を検討することにした。