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「高大接続」時代の高校教育 上

10面記事

高校

「社会に開かれた教育課程」目指す

 「社会に開かれた教育課程」を目指す次期学習指導要領。高校段階では、教科・科目の大きな見直しの方向にあることは前号までで触れてきた。中央教育審議会では選挙権年齢18歳への引き下げなどを背景に「18歳の段階に身に付けておくべき力は何か」などの観点から必要な資質・能力なども検討してきた。「高大接続」時代に新たな教育課程が位置付くとき、それぞれの高校では「カリキュラム・マネジメント」が一層重要になりそうだ。これまでの「取りまとめ」(案)などを基に概観してみる。

カリキュラム・マネジメント
「総則」の構造を刷新
教科・科目選択幅生かし編成

 「社会に開かれた教育課程」とは「よりよい学校教育を通じてよりよい社会づくりを目指すという目標を社会と共有しながら、学校教育を通じて子供たちにどのような資質・能力を育成するかを教育課程において明確にし、社会と連携・協働しながら育んでいこうとするものである」という。
 こうした理念を掲げ、子どもたちに必要な資質・能力を育んでいくために求められるのは「各学校が『カリキュラム・マネジメント』を通じて、子供たちが『何ができるようになるか』『何を学ぶか』『どのように学ぶか』を組み立て、家庭・地域と連携・協働しながら実施し、子供たちの姿を踏まえながら不断の見直しを図ること」。
 学校教育の改善・充実の好循環を生み出す「カリキュラム・マネジメント」の実現が求められ、次期学習指導要領では「総則」の構造を刷新し、章立ても変更していくことが検討されている。
 具体的には、「何ができるようになるか」(教育目標と育成すべき資質・能力の明確化)▽「何を学ぶか」(各教科等を学ぶ意義と教科等横断的な視点を踏まえた教育課程の編成)▽「どのように学ぶか」(各教科等の指導計画の作成と実施、学習・指導の改善・充実)▽「何が身に付いたか」(学習評価の充実)▽「子供の発達をどのように支援するか」(学習活動の基盤作り、キャリア教育、特別な配慮を必要とする児童への指導等)▽「実施するために何が必要か」(家庭・地域との連携・協働、チーム学校等)―を構想する。
 「カリキュラム・マネジメント」については「全ての教職員が参加すること」「地域や社会の変化を受け止めながら、学校教育目標や学校として育成を目指す資質・能力を明確にし、その実現に向けて、各教科等がどのような役割を果たせるのかという視点を持つこと」「家庭・地域とも目標を共有し、学校内外の多様な教育活動が目標の実現にどのような役割を果たせるのかという視点を持つこと」などを重要視した。
 高校に対しては「教科・科目選択の幅の広さを生かしながら、生徒に育成する資質・能力を明らかにし、具体的な教育課程を編成していく」や「義務教育段階の学習内容の学び直しなど、生徒の多様な学習課題を踏まえながら、学校設定教科・科目を柔軟に活用していくこと」―を求めた。

高等学校・総則の改善のイメージ(たたき台案)

育成すべき資質・能力
「生きて働く『知識・技能』」など三つの柱で整理

 育成すべき資質・能力は三つの柱の下で議論した。三つの柱とは「何を知っているか、何ができるか(生きて働く『知識・技能』の習得)」「知っていること、できることをどう使うか(未知の状況にも対応できる『思考力・判断力・表現力等』の育成)」「どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか(学びを人生や社会に生かそうとする『学びに向かう力・人間性等』の涵養(かんよう))」である。
 「資質・能力の三つの柱」は「『確かな学力』『健やかな体』『豊かな心』の知・徳・体を総合的に捉えて構造化することを目指すもの」だ。
 こうした考え方の下で議論される「知識」は「個別の事実的な知識のみを指すものではなく、学びの過程を通じて、既に持っている知識や経験と新しい知識とが結びつき、自分の中で構造化され、様々な場面で活用できるものとして習得される、いわゆる概念的な知識を含むもの」だ。
 三つの柱に沿い整理した初等中等教育全体、各学校段階を通じ育成すべき資質・能力。
 すなわち「発達の段階に応じた生活の範囲や領域に関わる物事について理解し、生活や学習に必要な技能を身に付けるようにする」「情報を捉えて多面的・多角的に吟味したり、問題を見いだし他者と協働しながら解決したり、自分の考えを形成し伝え合ったり、思いや考えを基に創造したりするために必要な思考力・判断力・表現力等を育成する」「伝統や文化に立脚した広い視野を持ち、感性を豊かに働かせながら、よりよい社会や人生の在り方について考え、学んだことを主体的に生かしながら、多様な人々と協働して新たな価値を創造していこうとする学びに向かう力や人間性を涵養する」を示す。
 各学校はこれらを基に教育目標や育成すべき資質・能力を明確にすることを求めた。
 グローバル化への対応、主権者として求められる資質・能力など現代的な課題に関しては教科横断的に育まれる資質・能力と各教科などとの関係性について整理・共有することを求め、引き続き、全ての学習の基盤となる言語能力の育成を重視する考えを明示した。

アクティブ・ラーニング
「主体的・対話的で深い学び」実現へ

 「カリキュラム・マネジメント」を実現するため、「どのように学ぶか」で、鍵を握るのが「アクティブ・ラーニングの視点」である。これについては「子供たちの『主体的・対話的で深い学び』をいかに実現するかという学習・指導改善のための視点」と説明する。
 「論点整理」後の議論によって「主体的・対話的で深い学び」は次のように整理されているという。
 掲げられた視点は「習得・活用・探究の見通しの中で、教科等の特質に応じた見方・考え方を働かせて思考・判断・表現し、学習内容の深い理解や資質・能力の育成、学習への動機付け等につなげる『深い学び』が実現できているか」「子供同士の協働、教員や地域の人との対話、先哲の考え方を手掛かりに考えること等を通じ、自らの考えを広げ深める『対話的な学び』が実現できているか」「学ぶことに興味や関心を持ち、自己のキャリア形成の方向性と関連づけながら、見通しを持って粘り強く取組み、自らの学習活動を振り返って次につなげる『主体的な学び』が実現できているか」―を挙げ、具体化する学習活動に言語活動、体験活動、問題解決的な学習、見通し・振り返りなどの関係を整理していくことが必要、としている。
 特に、表面的な活動に陥るケースもあるアクティブ・ラーニングがあることから、「深い学び」の視点を「極めて重要」と位置付ける。
 「深い学び」については「『習得・活用・探究の見通しの中で、教科等の特質に応じた見方・考え方を働かせて思考・判断・表現し、学習内容の深い理解や資質・能力の育成、学習への動機付け等につながる』学び」として、議論されている。
 「次期改訂が目指すのは、学習の内容と方法の両方を重視し、学習過程を質的に高めていくこと」という。「深い学び」をどう実現するのかが問われる。

資質・能力の育成と主体的・対話的で深い学び(「アクティブ・ラーニング」の視点)の関係(イメージ)(案)

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