こう変わる 高校の教科・科目構成 (3)
11面記事高校の次期学習指導要領では地理歴史科、公民科が大きく再編され、内容的には「現代社会の諸課題の解決」などが視野に入った。その一つ、共通必履修科目「地理総合」(仮称)も持続可能な社会づくり、環境条件と人間の営みとの関わりなどに着目する。また、数学、理科では選択履修科目「理数探究」(仮称)などの新設が検討されているが、指導体制などは課題になりそうだ。
地理
現代の諸課題解決へ「地理総合」(仮称)
「持続可能な社会」など考察
情報システムも活用求められる環境整備
共通必履修科目「地理総合」では、環境条件と人間の営みとの関わりに着目し、現代の地理的な諸課題を考察し、持続可能な社会づくりを構想する科目としてはどうか▽グローバルな視座から国際理解や国際協力の在り方を、地域的な視座から防災などの諸課題への対応を考察する科目としてはどうか▽地図や地理情報システム(GIS)などを用いることで、汎用(はんよう)的で実践的な地理的技能を習得する科目としてはどうか―の三つの視点から検討されてきた。
そのため科目構成案に三つの大項目=図1(右側)参照=を掲げている。
第一は「地図と地理情報システムの活用」(案)。地理学習の基盤となるよう地理を学ぶ意義の確認や、現代世界の地理的認識を深め、地図やGISなどに関わる汎用的な地理的技能を身に付けさせること。
第二は「国際理解と国際協力」(案)。自然と社会・経済システムの調和を図った世界の多様性のある生活・文化の理解や、地球規模の諸課題とその解決に向けた国際協力の在り方について考察させる。
第三は「防災と持続可能な社会の構築」(案)。国内や地域の自然環境と自然災害との関わり、そこでの防災対策について考察する。また、生活圏の課題について観察、調査・見学などを取り入れた授業を通じて捉え、持続可能な社会づくりのための改善、解決策を探究させる構成が考えられるなどとしている。
こうした内容の授業を展開する際、例えば、GISの指導ではコンピュータ機器、それを活用する環境、教材ソフトの導入の遅れなどが教員の経験不足とともに実施上の課題になることを懸念。GIS活用を普及するための環境整備、広報、活用可能なデータ情報の一元的整理・活用などを求めた。
「地理総合」で身に付けた学習成果を活用して探究を深める科目として、新選択科目「地理探究」(仮称、「地理に関する探究的科目」)=図1(左側)参照=が検討されている。内容の構成としては、事象からのアプローチとして、事象の規則性や傾向性などにも焦点を当てる現代世界の系統地理的考察、地域からのアプローチとして、地域の構造や変容などについての現代世界の地誌的考察、総合的な地理的アプローチとして、国土の特色について多面的・多角的に考察するなどの現代日本に求められる国土像―などが議論されている。
図1 地理分野の改訂の方向性(案)
数学、理科
「理数探究」(仮称)で主体的な活動
思考や態度を重視
数学、理科では、選択履修科目として「理数探究」=図2参照=の新設が検討されている。
当初、「数理探究」(仮称)としてきた新科目名は「理数探究」へと変更された。「数理」とは「数学の理論」を指し、数学・理科のどちらかに重きを置くわけではなく、辞書的にも「理科と数学」を意味する「理数」の方が適当などの理由からだ。
数学、理科では学ぶ楽しさ、学習の意義への肯定感が諸外国に比べ低く、さらに学校段階が上がるにつれ、低くなるという課題を抱えていた。
もともと現行の学習指導要領には「数学活用」や「理科課題研究」が設定されているが、大学入試で評価が行われていない、指導のノウハウが共有されていない―などにより、科目の開設率が低い。その一方で、スーパーサイエンスハイスクールでの「課題研究」は有効であることから、教育課程企画特別部会「論点整理」で「数学・理科の知識や技能を総合的に活用して主体的な探究活動を行う新たな科目」の設置検討を求めていた。
検討段階では、新科目を基礎を学ぶ段階「理数探究基礎」(仮称、1単位)と「理数探究」(2〜5単位)に分けることが提案されてきた。
「理数探究」では、新たな知見の有無や価値よりは、むしろ「探究の過程における生徒の思考や態度を重視し、主体的に探究の過程全体をやり遂げることに指導の重点を置くべき」とし、生徒個人やグループで主体的に探究のテーマ・課題を設定させるものとし「教員は例を示したり示唆を与えたりする程度とすることが適当」などと、指導上の留意点を示した。
また、実施体制に関連しては、数学、理科の教員を中心に全校的な体制を整える必要性について言及されている。
「特に探究を進める段階の指導に当たっては、1クラスの生徒に対して複数の教員が協働して指導に当たることが不可欠」などが考えられている。
図2 科目構成の見直しについて(案)
「数学活用」廃止、「数学C」新設
数学では、「理数探究」の創設により、現行の「数学活用」を廃止する。
また、「数学活用」の内容は、数学A、数学B、さらに新設する「数学C」へと移行する=図2参照。
このうち、「数学C」については「平面上の曲線と複素数平面」や「データの活用」(仮称)などで構成することなどが考えられている。
統計的な内容については、数学Bの内容を「数学C」に移行することを検討する他、「情報科」などとの連携を重視する構想である。