英語4技能評価 個別の大学入試で先取り導入
10面記事グローバル社会の下、英語教育では「話すこと」「書くこと」「聞くこと」「読むこと」の4技能評価の推進の大きな流れが生まれている。今年3月にまとまった「高大接続システム改革会議」最終報告では「大学入学希望者学力評価テスト」(仮称)への「多技能を評価する問題の導入」が盛り込まれた。「話すこと」の試験を平成32年度から実施できるのか、多技能評価をマークシート式問題とは別日程で実施するのか―などは今後の検討課題として引き継がれている。その一方、英語の多技能評価を先取りするように、個別の大学入試では、民間の英語資格・検定試験の活用が始まっている。次期学習指導要領の学習内容もにらみながら、今後の高校英語教育では4技能強化が大きな課題となる。大学入試での民間の英語資格・検定試験活用の現状などを見てみると―。
一般入試、国立大で1割超
活用理由 優秀な学生の確保
民間の資格・検定試験活用43%
文科省が特定非営利活動法人全国検定振興機構に委託した民間の英語資格・検定試験の大学入学選抜活用実態調査から、「大学アンケート調査」を見る。国公私立大学750校の事務担当者に昨年11月下旬から12月中旬にかけ、活用状況を聞いたもの。回答は695校、回収率92・6%。
まず入学者選抜での英語の民間資格・検定試験の活用について聞いた(回答時点での導入予定校を含む)。
「活用している」と回答したのは、299大学。割合にして43・0%。参考として示した。平成25年に実施した調査に基づく「平成25年度大学入学者選抜における民間の英語資格・検定試験の活用状況」では「活用している」が35・8%。当時と比べると約7%増加していることになる。
「活用している」の国公私立別内訳は、国立が35校43・2%、公立が21校26・3%、私立が243校45・5%になる。
民間の英語の資格・検定試験を活用している学部は、人文科学系学部が36・0%で最も多く、社会科学系学部が32・0%で続く。
「活用している」場合の入学者選抜の実施形態を見ると、国公私立全体では、推薦入試が29・2%、AO(アドミッションオフィス)入試が24・2%と2割を超えるものの、一般入試では6・3%にとどまる。
国公私立別の実施形態の特徴は、私立では推薦入試(31・5%)やAO入試(27・9%)での活用割合が高く、一般入試での活用は6・4%にとどまっている点。
国立は推薦入試(23・5%)での活用割合が高いものの、AO入試(13・6%)や一般入試(11・1%)でも1割を超えていた。
「活用している」大学には、さらに、「対象としている学部・学科と定員数及び具体的な合否・加点等のライン」の記入を求めたところ、2226パターンの回答があった。これをCEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠=グラフ参照)の基礎段階の言語使用者(A1)から熟練した言語使用者(C2)までの各レベルに換算して表示すると、「B1相当」が44・9%で最も多い。民間検定・資格試験などで対比させると、英検2級程度、TOEFLiBT42点〜71点などに相当する。次いで「A2相当」が35・3%で続いた。これは英検準2級程度。
「B2相当」は11・5%と1割を超えていたが、英検準1級、TOEFLiBT72点〜94点などに相当する。
「活用している」大学299校に、その理由を聞いた。
最も多く理由として挙がったのは「より優秀なグローバルで意識が高い学生を確保する為」で、64・2%を占めた。
次いで「採用している民間の英語の資格・検定試験で入学者に求められる英語4技能の能力が測定できるから」が48・2%、「テスト結果の客観性・国際的通用性があるから」47・2%が続いた。
一方、「活用していない」396校の理由では「自校で行っている入学者選抜の方法で十分と考えている」が74・2%と最も多かった。
さらに、「自校で行っている入学者選抜の方法で十分と考えている」理由を聞くと、「4技能の能力の測定をしなくても優秀な学生が確保できる」(13・1%)、「現行のカリキュラムでは、4技能の能力を必要としない」(11・6%)、「英語以外の能力が高ければ十分」(8・6%)の順で多い。
また、「活用していない」大学396校に、今後民間の英語資格・検定試験を活用するには、どのような条件が整い、どのような点が改善されることが必要かを、尋ねた。
約半数の51・0%が「受験生の選抜の観点から適切な合否ライン設定を行うための情報が得られること」を挙げる。
この他、指摘が多かったのは「大学のアドミッション、カリキュラム、ディプロマ・ポリシーにあった民間の英語の資格・検定試験についての情報が得られること」(38・9%)、「民間の英語の資格・検定試験の内容や評価方法についての情報が十分に発信されていること」(38・9%)、「民間の英語の資格・検定試験の結果の客観性が担保されること」(37・4%)など。
民間の英語の資格・検定試験活用大学299校の入試実施形態
活用校での具体的な合否・加算点ライン(CEFRの各レベルで換算)
公表データに基づき文科省が作成した試験の難易度とCEFRとの対照表
高大双方の推進に課題
指導力や費用負担の指摘も
「大学アンケート」調査とは別に、平成27年度から30年度に民間の英語の資格・検定試験を入試に導入(予定)している大学9校(関西学院大、上智大、筑波大、東京海洋大、長崎大、明治大、山口大、立教大、立命館大)への個別インタビュー調査も実施している。
ここから民間の英語の資格・検定試験活用に当たっての課題や、4技能の評価を目指す「大学入学希望者学力評価テスト」(仮称、以下、評価テスト)との関係などについて見る。
個別の大学入試改革との関連では、個別入試の英語の出題を行わず、外部検定試験を活用する場合に、高校段階での外部試験の受検の普及、検定内容と高校での学習内容の整合性を課題に挙げた大学がある。また、外部試験による英語力の測定でのスコアリングの設定に関する調整、高校生の受検費用負担などの課題が挙がった。
評価テストとの関連では、個別の入試での英語試験を民間の英語の資格・検定試験に置き換えるのか、評価テストによる4技能型試験に置き換えるのかといった課題、評価テストで英語の試験を行わず、民間の英語の資格・検定試験のスコアなどを利用する場合の個人データの共通プラットフォームへの集約化―といった課題、要望があった。
この他、4技能を教える教師の指導力、大学入学後に4技能の能力を伸長するためのカリキュラムの用意、卒業要件に外部試験スコアを求めた時の在校生への受検費用負担、海外留学に伴う国の補助金、学内で取り組む4技能の測定評価、高大双方での4技能試験活用の推進、併用してインターナショナルバカロレア(IB)の導入なども、各大学は課題視した。
高校時に37%が受検
全国の国公私立大学750校の在学生を対象に「受験生アンケート」も「大学アンケート調査」と同時期に試み、約1万3500人の学生から回答を得ている。
高校生の時に37・3%の学生が民間の英語の資格・検定試験を受検したと回答した。
その理由は「高校の学習活動の一環として」35・2%が最も多く、「個人のスキルアップのため」29・6%が続いた。
民間の英語の資格・検定試験の受検理由に「入試に活用するため」と回答した学生が15・8%(434人)いた。このうち、35・0%に当たる154人が実際に活用したと答えた。活用した入試方式では「推薦入試」(15・3%)が、活用の方法では「出願要件」(48・0%)が、それぞれ最も多かった。
民間の英語の資格・検定試験の結果を大学入試で使いやすくするために必要なものを聞くと、半数を超える学生が「より多くの大学における活用」(54・7%)を挙げた。
この他、「高校の学習や受験勉強と民間英語試験の内容の整合性」(30・6%)、「民間英語試験の受検機会の増加」(30・4%)、「受検料負担の軽減」(22・7%)などが上位を占めた。
ちなみに、受検料負担の希望価格帯は平均3739円だった。