大学入試改革、知る機会に
8面記事全国セミナー 3日スタート
大学入試改革先取り対応セミナー(日本教育新聞社・(株)ナガセ主催)が3日からスタートする。福岡市を皮切りに、全国12会場に主に高校教員らが参加する。今回のセミナーでは大学入試改革や高大接続改革の現状や今後を知る機会を提供していく。この改革を推進する文科省「高大接続システム改革会議」の審議も佳境を迎えている。
高校教育改革全体像5日の会議で報告へ
文科省「高大接続システム改革会議」の審議は、公表している同会議の「中間まとめ」(素案)を中心に進んでいる。
「大学入学希望者学力評価テスト」(仮称)や「高等学校基礎学力テスト」(仮称)が審議の柱だ。
「高等学校基礎学力テスト」(仮称)については「現在、中央教育審議会で検討が進められている教育課程の見直し、教員の指導力向上の議論の動向等も踏まえた上で、次回のシステム改革会議において、高等学校基礎学力テスト(仮称)を含めた高等学校教育改革の全体像を記述する予定」といった現状にある。
5日に第5回の同会議開催が予定されているところだ。
「高等学校基礎学力テスト」(仮称)については「基本的な考え方」などは示されている。また、実施に当たっては、「現行学習指導要領下」と「次期学習指導要領下」とに分けて実施内容が検討されてきた。
例えば、「現行学習指導要領下」では「対象教科・科目」として「選択受験も可」としながら「円滑に導入する観点から、国語、数学、英語で実施」。「範囲としては、全ての生徒が共通に履修する『国語総合』『数学I』『コミュニケーション英語I』を上限」などとし「現行の学習指導要領においては、義務教育段階での学習内容の確実な定着を図ることとされていることを踏まえ、義務教育段階の内容も一部含める」ことが検討されている。
この他「知識・技能を中心としつつ、思考力・判断力・表現力等を問う問題も一部出題」(問題の内容)や「試行を通して、CBT―IRTを導入する方向で検討」「紙による試験実施も念頭に置きつつ検討」(出題・解答・結果提供方式)、「大学入学者選抜で活用する場合には、原則として2年次の結果は活用しない方向で検討」「就職時の活用も考えられるが、企業等に対しテストの結果をもって生徒の可能性が狭められることのないよう一定の配慮を求める」(活用の在り方)などに言及する。
「次期学習指導要領下」では「高校生の基礎的な学習の達成度を把握する観点から、次期学習指導要領において示される必履修科目を基本として実施」などとしている。
学力評価テスト
CBT導入、36年度想定
「大学入学希望者学力評価テスト」(仮称)についても「次期学習指導要領のもとでの基本的枠組み(平成36年度〜)」と「現行学習指導要領下における基本的枠組み(平成32〜35年度)」に分けて記述した。
まず「現行学習指導要領下における基本的枠組み」では「試験の科目数については、思考力・判断力・表現力を構成する諸能力を中心に評価する作問体制への転換が必要であることや、受検者数の状況等も勘案しつつ、できるだけ簡素化する」。
「次期学習指導要領のもとでの基本的枠組み」では検討課題として「導入が検討されている科目のうち、『数学と理科の知識や技能を総合的に活用して主体的な探究活動を行う新たな選択科目』に対応する科目の実施を検討」「教科『情報』に関する検討と連動しながら、対応する科目の実施を検討」なども挙げた。
出題形式については、記述式問題に触れ「従来から採点等に課題があることを踏まえ、平成32年度から平成35年度までの現行学習指導要領のもとでは短文記述式の問題の導入、平成36年度以降の次期学習指導要領のもとではより文字数の多い記述式の導入を検討する」などとした。
これも検討課題となっていたテスト実施上のCBT(Computer―Based Testing)の導入については「平成36年度から始まると想定される次期学習指導要領のもとでのテストからCBTを実施することとし、現行学習指導要領のもとでの平成32〜35年度間については、CBTの試行に取り組む」と時期を明示した。
また試行に際しては「とくに、『高等学校基礎学力テスト(仮称)』の検討状況や実績等を踏まえつつ、端末の整備、システムの安定性・セキュリティの確保、機器導入・維持管理のコスト、その他の本格的実施に向けた課題について検討する」などとしている。
高大接続システム改革会議「中間まとめ」(素案)抜粋
「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の導入
具体的な制度設計の考え方
○ II2.(段階を踏まえた着実な実施)で述べた考え方のもとに、高等学校3年生が次期学習指導要領のもとで学ぶことが想定される平成36年度およびそれ以降、また「高大接続改革実行プラン」で「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の導入が示されている平成32年度以降平成35年度までの現行学習指導要領の実施期間のそれぞれの期間について、以下のような方向で取り組むことが必要である。
(1)対象教科・科目等
(次期学習指導要領のもとでの基本的枠組み(平成36年度〜))
○ 次期学習指導要領の趣旨を十分に踏まえ、大学入学者選抜における共通テストとして、とくに思考力・判断力・表現力を構成する諸能力をより適切に評価できるものとする。
・地理歴史・公民については、知識・技能に関する判定機能に加え、次期学習指導要領における科目設定等に関する検討に留意しながら、例えば、歴史系科目においては、歴史的思考力等を含め、思考力・判断力・表現力を構成する諸能力の判定機能を強化する。
・次期学習指導要領において導入が検討されている科目のうち、「数学と理科の知識や技能を総合的に活用して主体的な探究活動を行う新たな選択科目」に対応する科目の実施を検討する。
・数学、理科については、知識・技能に関する判定機能に加え、思考力・判断力・表現力を構成する諸能力に関する判定機能を強化する。
・国語については、知識・技能に関する判定機能に加え、次期学習指導要領における科目の在り方に関する検討に留意しながら、例えば、言語を手掛かりとしながら、限られた情報のもとで物事を道筋立てて考え、的確に判断し、相手を想定して表現するなど、思考力・判断力・表現力を構成する諸能力に関する判定機能を強化する。
・英語については、書くこと(ライティング)や話すこと(スピーキング)を含む4技能について、例えば、情報を的確に理解し、語彙や文法の遣い方を的確に判断し、相手に適切に伝えるための、思考力・判断力・表現力を構成する諸能力を評価することを検討する。また、民間との連携の在り方を検討する。
・次期学習指導要領における教科「情報」に関する検討と連動しながら、対応する科目の実施を検討する。
(現行学習指導要領下における基本的枠組み(平成32〜35年度))
○ 現在、中央教育審議会で行われている次期学習指導要領の改訂に係る議論の方向性を勘案しつつ、イ(2)(「思考力・判断力・表現力」を構成する能力の明確化とそれを踏まえた作問)で述べた、思考力・判断力・表現力を構成する諸能力をより適切に評価できるものとする。
○ 各教科・科目の出題内容については、次のような方向とする。
・地理歴史・公民については、知識・技能に関する判定機能に加え、例えば、歴史系科目においては、歴史的思考力等に関する判定機能を強化する。その際、単なる暗記などによる個別具体的な知識の量や些末(さまつ)な知識の有無により判定することがないよう出題の仕方を工夫する。
・数学、理科については、知識・技能に関する判定機能に加え、思考力・判断力・表現力を構成する諸能力に関する判定機能を強化する。
・国語については、知識・技能に関する判定機能に加え、思考力・判断力・表現力を構成する諸能力に関する判定機能を強化する。
・英語については、書くこと(ライティング)や話すこと(スピーキング)を含む4技能を重視して評価する方向で検討する。
○ 試験の科目数については、思考力・判断力・表現力を構成する諸能力を中心に評価する作問体制への転換が必要であることや、受検者数の状況等も勘案しつつ、できるだけ簡素化する。
(2)出題・解答・成績提供方式
(多様な出題・解答方式の導入)
○ 思考力・判断力・表現力を構成する諸能力をより適切に評価するため、多肢選択式の問題に加え、問題に取り組むプロセスにも解答者の判断を要する部分が含まれる問題、記述式の問題などの導入を目指す。
○ 多肢選択式の問題については、各教科・科目の特性を踏まえながら、分野の異なる複数の文章の深い内容を比較検討することを要する問題、多数の正解があり得る問題、選択式でありながら複数の段階にわたる判断を要する問題、他の教科・科目や社会との関わりを意識した内容を取り入れた問題などの導入を検討する。
○ 選択式でより深い思考力等を問う問題の例としては、例えば、複数の文章などを読み、そこで語られている考え方や取り組み方の共通パターンを分析し、お互いに連動する複数の選択肢群からそれぞれ選択肢を選び、その組合せに応じて複数の回答が成立する「連動型複数選択問題(仮称)」などの導入を考慮して検討を進める。
○ 記述式問題については、従来から採点等に課題があることを踏まえ、平成32年度から平成35年度までの現行学習指導要領のもとでは短文記述式の問題の導入、平成36年度以降の次期学習指導要領のもとではより文字数の多い記述式の導入を検討する。
○ 記述式問題の導入については、作問体制や採点体制の整備・充実についての検討が必要である。例えば、採点について以下のような点の検討が必要である。
・現行の機械によるマークシート式の体制に加え、多数の採点者の確保、採点基準の作成や研修が必要となること
・採点に時間がかかる可能性があることから、テストの日程について十分な検討が必要であること。(なお、採点期間や採点者数については、コンピュータによる採点支援の導入によってある程度削減できる可能性がある。)
・記述式問題は紙媒体によるテストでもCBT(Computer―Based Testing)でも可能だが、紙媒体の場合にはコンピュータによる採点支援において解答用紙の電子化等の採点準備が必要であること
今後、記述式の導入に係るコスト面やスケジュール面の課題、コンピュータによる採点支援の技術的な可能性、テキスト入力等が可能なCBTの導入に係る課題等を検討する必要がある。
(CBTの導入)
○ 思考力・判断力・表現力を構成する諸能力をテストによって評価するには、CBTの導入が有効であると考えられる。例えば、様々な資料や動画を活用した出題内容の拡大、テキスト入力を利用した記述式問題の導入、音声入力を利用したスピーキングの評価、正解のない判断を相当回数伴う問題の導入、同一テスト時間内において問題の正答率に応じてそれ以降の問題の難易度を変えたりすることのできる適応型テストへの拡張、その他多くの展開を想定できる。
○ 他方、CBTについては、実施のための環境整備に時間を要すること、入学者選抜に係る大規模なテストにおける実施事例がないことなどに鑑み、導入には十分な準備が必要である。
○ このため、平成36年度から始まると想定される次期学習指導要領のもとでのテストからCBTを実施することとし、現行学習指導要領のもとでの平成32〜35年度間については、CBTの試行に取り組む。試行においては、とくに、「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の検討状況や実績等を踏まえつつ、端末の整備、システムの安定性・セキュリティの確保、機器導入・維持管理のコスト、その他の本格的実施に向けた課題について検討する。
(難易度設定の考え方)
○ 「知識・技能」、「思考力・判断力・表現力」について広範囲にわたる受検者が受検する可能性があるため、問題の難易度をできるだけ広範囲に設定することとする。なお、一般に思考力・判断力・表現力等を中心に評価する問題を多く出題するとテストの難易度は上がる傾向にあることを念頭に置く必要がある。また、選抜性の高い大学が入学者選抜の評価の一部として十分活用できるよう、高難度の問題を選択できるようにすることが必要である。
○ さらに、次期学習指導要領に向けて検討されている、より高度な思考力・判断力・表現力等を育成するための新たな教科・科目の在り方などを念頭に置き、平成36年度以降、当該教科・科目に対応した高難度の出題を行うことについても検討する必要がある。
(結果の表示の在り方等)
○ 結果の表示については、個別大学の入学者選抜における多面的・総合的な評価を促進する観点から、大学や大学入学希望者に対し、結果の多段階による表示による提供を行うこと、あわせて、種々のデータ(例えば、パーセンタイル値に基づき算出されたデータや標準化得点など)を大学に提供することなどについて、大規模な共通テストとしての幅広い識別力の確保の必要性なども踏まえつつ、今後より専門的に検討する必要がある。
(3)実施方法
(実施体制、実施場所等)
○ 「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」と「高等学校基礎学力テスト(仮称)」について連携体制あるいは統合的体制が必要なこと、個別大学の入学者選抜における多角的・総合的評価方法とも関連すること、とくに英語については民間との連携も検討する必要があること、CBTを導入すること等を考慮して、具体的な実施体制、実施場所等を検討する必要がある。
(実施回数、実施時期等)
○ 答申においては、大学入学希望者に挑戦の機会を与えるとともに、資格試験的利用を促進する観点から、年複数回実施することが提言されている。
○ 年複数回実施を導入するには、統計的な処理を行うことで複数の問題間の難易度を平準化するため、項目反応理論(IRT=Item Response Theory)等に基づく仕組みを導入することが必要となる。
○ IRTを導入する場合には、事前に試験問題の難易度や識別力などの項目特性を推定するために、問題の非公開を前提に、全ての問題について予備調査を実施することや、多数の問題を蓄積することなどが必要になる。
○ 年複数回実施を導入するための方策としては、他に、法科大学院全国統一適性試験のように複数回の試験の結果を「等化」する方法も考えられる。この場合には、IRTのような大量の問題の蓄積は必要ないが、受検者の解答に応じて出題を変え、より幅広い能力を評価する「適応型テスト」への拡張等は困難になる。
○ また、年複数回の実施を行う場合には、テストの実施時期と高等学校教育の日程関係等について十分な検討が必要になる。さらに、テストの実施場所を大学とする場合には、大学側の負担についても検討する必要がある。
○ これらを踏まえ、年複数回実施の方法や日程等については、作問や採点に関する課題を含め、関係者の意見も聴きつつ十分な検討を行う必要がある。
(受検しやすい環境整備の方策)
○ 実施日程や一科目当たりの時間については、受検者の集中力や体力面等にも配慮しつつ、思考力・判断力・表現力等を中心に評価するテストとして適切な設定を検討する必要がある。
○ 受検者の経済的負担を考慮して、一回当たりの検定料を適切な価格に設定するための検討を行う必要がある。
○ 受検場所に短時間では行けない受検者への配慮、障害者の受検への配慮、海外からの受検への配慮など、受検しやすい環境整備や実施方法の策定について、制度設計全体の中で十分検討する必要がある。