「大学入試改革」授業案 漢文理解、関連文献で話し合い
23面記事国語
川妻 篤史 桐蔭学園高校教諭
漢文のALの流れ
プレテストの第1問から第5問は、複数の資料を比較しながら解答しなければならない設問がある点で共通している。
古典についていえば、こうした設問に対応できる資質・能力を、訳読による講義一辺倒の授業で育成できると期待するのは難しい。「主体的・対話的で深い学び」を実現できるアクティブラーニング(AL)型授業こそがふさわしいと考えている。
私が高校2年の「古典B」(漢文)の授業で実践しているAL型授業は、次のような流れで取り組んでいる。
(1)読み方の確認
(2)白文訓読練習
(3)訓読の疑問点解消
(4)クイズ形式による内容理解
(5)話し合い学習法(LTD)を用いた学習
(6)書き下し練習
(7)現代語訳作成
(1)では音読活動を大切にする。
(2)では漢字と漢字をつなぎ合わせる意識を持ちながら声に出して読むよう指導する。訓読について疑問が生じたところがあれば、それを記録しておくよう指示する。
(3)では、訓読についての疑問点をグループで出し合い、その疑問を解消していく。
(4)では、読み取りに必要な事項(指示語・主語・対など)について短問形式で問いながら、内容把握を進めていく。
(5)は、学びを深める単元の山場となるところだ。
(6)と(7)では、あらためて文章を読み返し、内容などを再確認する。
「(5)LTDを用いた学習」では、漢文教材に関わる別の文献を「課題文」として用いて、学びを深めていく。
例えば、道家思想(老子・荘子)の単元では、湯川秀樹『本の中の世界』から「荘子」を課題文として用いる。
ただし、課題文を読む前に「自分の人生を考える上で儒家・道家のいずれの思想を支持するか」と問いを出し、自分なりに考えてみるよう促す。実際の授業では、儒家を支持する生徒たちが多く、「道家は儒家のアンチテーゼ程度のもの」などといった意見が出された。こうした事前ワークを入れると、その後の学びがより深いものとなる。
ワークは予習、授業は話し合い
LTDを用いた学習は、予習時のワークと授業時のミーティングから構成される。
予習では次のことを課す。
課題文を読んだ上で、
(1)言葉の意味を調べる
(2)内容を話題ごとにまとめる
(3)既有の知識と関連付ける
(4)自己と関連付ける
(5)課題文を評価する
これらはワークシートに記入できるようにし、授業時のミーティングで用いる。授業時のミーティングは、50分授業2コマを使い、グループで予習状況を確認するところからスタートする。
1時間目は、予習事項(1)(2)を扱う。(1)では調べてきた言葉の意味をメンバー同士で発表し合い、(2)は話題ごとのまとめをメンバー同士で発表し合う。
2時間目は(3)〜(5)を扱う。(3)では漢文教材と課題文との関連付けや、これまで学習してきた知識との関連付けについてグループで話し合う。
ここでは類似点・共通点や相違点・矛盾点に注目するよう促す。(4)では、自分の経験と関連付けることで自分の変化・成長に役立てる。(5)では、課題文を批判的かつ建設的に評価し、より良くする提案も行っていく。
ミーティングは、予習してきた内容をグループ内で共有しながら話し合う活動がベースとなっており、自分の言葉で表現すること、そして発言内容のズレを手がかりに学びを深めていくことを大切にする。
次に示す生徒たちの振り返りを見れば、こうしたAL型授業が主体的・対話的で深い学びにつながるものであると分かる。「ちゃんと予習をしたことで実のある議論ができた」「疑問が残るような終わり方でよかった」「物理学と漢文、一見違うものがどこか共通点をもっているという考えに共感できた。すべてつながっていると思った」「実体験が自己との関連付けにはとても有効。LTDは大変ためになった。将来(未来)につなげたい」「文章を批判的に見ることを日々していなかったので、本文の改善点が全然わからなかった」
新テストで求められる資質・能力は何も特別なものではない。新学習指導要領で示された資質・能力の三本柱(知識・技能の習得、思考力・判断力・表現力、学びに向かう力・人間性)をバランスよく育成できれば、問題なく対応できる。主体的・対話的で深い学びが実現できるAL型授業で、こうした資質・能力をバランスよく育成していくことを目指したい。